リサの場合。

著者:佐藤 梨花子 | 2020年1月16日更新

回答者

- 名前: リサ

- 2016年夏より海女になる

- 独身

- 海の食堂 久兵衛 オーナー

- 相差生まれ、相差育ち

 

連絡方法

- 店を直接訪問

- 日本語のみ可

 


<※なお、本記事の内容は個人の見解であり、海女全体や当該地域を代表するものではありません。>



今年の夏に食事処を始められたリサさん。海女と飲食店のオーナー、2足の草鞋を履き分けるのは大変じゃないですか?

 すごく大変です!6月22日にお店をオープンしてからずっと海女へ行けてなかったんですけど、この間ようやく行く事が出来ました。

 ものすごく爽快でした!でもランチの時間に間に合うように時間を気にしながらの漁だったので、時間いっぱいは潜れなかったのが残念でした。浜から泳いで潜るポイントまで行かなければいけないので、往復の時間も入れるとあまり長く潜っていられません。船でポイントまで行って、潜って、帰ってくる人たちが羨ましいです、時間も節約できるし長く潜っていられますから。2つの仕事を自分1人で回すのは大変です。

 でも海女をしていなかったらこの店もやってないかもしれません。

海女になる以前は何をしていて、そしてどうして相差へ帰ってこようと思ったんですか?

 これまで色々な仕事をしてきました。1か所に留まるのが好きじゃなくて。

 横浜に5年いましたが腰のヘルニアを患い仕事を続けることが困難になってしまって、それが直接の理由ではないのですが地元へ戻って来ることにしました。

 ヘルニアが治ってからは志摩市の居酒屋で働きました。そこの大将が「1回海潜ってこい、リサちゃんなら絶対ハマるから」って言ってくれていて、それが海女になることを意識するようになったきっかけだったように思います。

 28歳の時に相差へ戻ってきましたが、いずれにせよ30歳までには帰ってきただろうなとは思います。

 都会で暮らすのは楽しいし慣れますが、やっぱり田舎の方が住みやすいです。

じゃあその大将のお陰で海女になろうって決めたんですか?

 うーん、そんなことはないですね。

 大将が海女に興味を持つようになったきっかけではありましたが、「よし海女になるぞ!」なんて意気込みはまだありませんでした。

 夏のある日、祖母が私に海女に行って来たらどうかと言ってきたんです。祖母はすでに海女を引退していましたが、まだ当時のウェットスーツや道具があるので私に貸してくれると言って。正直、私にとって海はあまりに当たり前の存在すぎて、わざわざ行きたいとも思いませんでした。

 でもちょうど前の仕事を辞めたばかりで収入もなく、海産物を獲れば少しのこずかい稼ぎにはなるかもしれないと思って1人で海女へ行く事にしたんです。でも浜へ行って海に入ったらすごく面白くって!ハマっちゃったんですよね。

初めて海女をした日の事を教えてくれますか?

 当時はまだ自分の道具がなかったので、祖母のウェットスーツを借りて1人で海女に行きました。

 私には少し小さかったのですが、なんとか着ることが出来たので大丈夫だろうと思って。

 潜っている最中、海女ってこんなに苦しいのかと驚きました。息が上手く吸えなくて酸欠になりそうでした。中には80歳の方もいる海女のおばあさんたちがこんなに苦しい状況で潜っていたなんて想像もしていなかったので、衝撃を受けました。

 これ以上潜っていられないと思い、近くで潜っていた他の海女さん達より先に海から上がりました。

 でも後になって、上手く息が吸えなかったのは単にウェットスーツが小さすぎただけだと分かりました。自分用のウェットスーツを仕立てて着てみたら全然苦しくなかったんですよ!もう笑っちゃいました。

リサさんは海女を始めてから誰と一緒に潜っていたんですか?

 初めは1人で潜っていましたが、その後祖母の友人と一緒に海女へ行くようになりました。

 でもある日、その日私は別の場所で潜る予定で彼女とは別行動をしたんです。朝、顔を合わせてその別れ際、彼女の後姿になんだか違和感を覚えました。いつもとなんだか様子が違うような気がしたんです。その時は急いでいたのであまり気に留めず、そのまま漁場まで移動しました。

 でも後から聞いた所、その日彼女は海女の最中に気分が悪くなったらしく、近くの船に乗せてもらい町まで戻ってきたそうです。検査の結果どこにも異常はなかったのですが、それ以来家族が心配して彼女に海女をすることを禁止してしまったんです。

 それからは現在の師匠である男の海女さんや友人たちの仲間になり、一緒に潜るようになりました。

現在独身のリサさん、理想の男性はどんな人ですか?もしその男性が余所の町に住んでいたとしたらどうしますか?

 特に好きな男性のタイプというものはないんですが、子供の頃から知っている地元の人との結婚は想像が出来ないですね。縁があれば会えると思っていて。

 今までも大切なタイミングで色々なご縁に助けられてきた経験があるので、結婚相手についてもご縁や直観を信じています。

 相手の方が相差へ婿養子に来てくれたら最高ですけどね。

「海女」という単語を聞いてピンと思い浮かぶ言葉を教えて下さい。どうしてその言葉を選んだのかも教えてくれませんか?

 「おばあさん」と、それから「アワビ」ですかね。

 やっぱり「海女」と考えた時、年を取ったしわしわのおばあさん達の顔が頭に浮かびます。その深く刻まれたしわに力強さというか、貫禄を感じますね。

 私たちみたいな若い海女は、「海女」(英語でAma diver)と言うにはまだまだ早いという感じがします。まだ私たちは「ダイバー」ですね。

 自分があの年齢になった時、あんな風になれたらいいなぁと思います。

 アワビはやっぱり私たちにとって特別な物で、憧れがあるからだと思います。値段も高いし、獲るのも難しい。

 せっかくアワビを見つけても、ひと息で獲れない事もあります。そんな時は呼吸を整えてもう一度同じ場所へ潜るのですが、何度同じ場所を潜っても先ほどのアワビが見つからない時があるんです。

 そういう時の悔しさはもう本当にやるせないです!

海女として海に潜るようになって、海女の印象って変わりましたか?

 海女ってとても神秘的な存在だなとすごく感じるようになりました。

 海女って何と言うか、すごいですよね。人間がものすごく小さく見えるんです、自然が大きすぎて。アワビを見つけた時なんかも、海の中で「頂きます」って気持ちになるんですよね。生きている姿を自分の目で見て獲る、自分はこれを殺してしまうのかって考えてしまうと胸が痛みます。命を頂いているんだという感覚を覚えます。

 でもそれが海女にハマった理由の一つだったと思います。

 目に見えない不思議な世界、生き物の命を感じる事、神様の存在、私は海女のそういったものに惹かれます。

相差で生まれ育ったリサさんにとって、海女になるという事は自然な選択だったと思いますか?都会から海女になりたいと決心し移住する人がいる中で、リサさんのように地元に留まり生きることを選んだ方の意見を聞かせて欲しいです。

 私たちのように相差で生まれ育った人間にとって、「海女になる事」と言うのはそこまで難しい選択でも大きな決意を必要とするものでもありません。とても自然な事。だから海女の事を知りたいという人や海女になりたいと言って余所から人が来る事についても、逆に「どうして?」と思ってしまいます。

 都会の方が何でもあるだろうに一体どうして海女なんかに興味があるんだろうって不思議に思います。

 私たちが海女になる事についても、ベテランの海女からは「ちゃんと獲ってこれるの?」とからかわれる事はあっても、反対されたり批判されることはまずないですね。

 海女というのは危険な仕事なので心配されることはありますが、早く上手になれるようにと先輩海女たちはよくアドバイスをくれたりします。